『フューチャー・エレクトリカル・フィナーレ』創作ノート ~散文ブログ『ちりぶみ』の活動終了に寄せて~

※例の如くネタばれなので、作品を読んでみる気がもしあれば、作品( 『フューチャー・エレクトリカル・フィナーレ』 )から先にどうぞ。
今から2年前の2005年の夏くらいだっただろうか。大学時に所属していたサークルの先輩達から連絡があった。「散文ブログ立ち上げるから参加して」という用件だった。
その当時、社会人一年生として多忙な日々を送っていた身で、果たして仕事の合間に創作活動が出来るのか、正直不安があったものの、誘われたことは光栄でありかつ嬉しく、「喜んで参加します」と返事をしたことを覚えている。
2ヶ月に1度、自分の当番が回ってきて、その決められた日(偶数月の4日が自分の当番だった)に合わせて作品をブログにアップする、というのがその散文ブログの仕組みだったのだが、最初に抱いた不安は後に的中し、なかなか創作の時間が取れずに過去作品でお茶を濁したり、締め切りを堂々と破ったりという結果にはなったし、正直締め切りが苦痛だったりもしたものの、年に6回とは言え創作する機会を与えてくれたこの活動には感謝しているし、書き上げた後の喜びはいつも爽快だったことを覚えている。
そんな活動、散文ブログ「ちりぶみ」の活動停止が主宰の2名から発表された。遂に来たか、というのが率直な感想だった。自分自身も含め、モチベーション低下を皆ひしひしと感じていた。そんな中での決断だったので、納得できるものだった。
そんな状態の中で、果たしてラストの作品はどのようなものにするのかを考えた。通勤中の電車の中で、営業周りの合間で、残業中の息抜きで、考えた。そして出した結論が、「みんなの作品とコラボレーションしてしまえ」というものだった。
その結論に至ったのが最終締切日の2ヶ月ほど前で、後はどの作品を選ぶのか、どのようにコラボするのかを練る必要があった。そこで通勤中に携帯電話で皆のこれまでの作品を読破し、「これは使える」「この部分を取り込みたい」といったアイデアを携帯電話のメモに残していった。
全ての作品を読破し、メモが揃ったのが締め切り一週間前。今度はそれらのメモをどのように組み込むか、どう組み上げるかを考えなければいけない。
ネット上での再会というアイデアは、「ワールドチャットj2」と、ゲーム「クーロンズゲート」から。
「ワールドチャットj2」は、昔「アバター」や「オンラインゲーム」が流行る前に生まれた、当時画期的だったサービスで、ネット上の架空空間で自分のアバター(とはいっても2Dの薄っぺらいアバターだった)を操りチャットを楽しむというもの。
おそらく10年ほど前の話だけれど、当時は本当に画期的で、単なるチャットなのに大勢の客が訪れ、その空間内に独自組織(今で言うオンラインRPGのギルドみたいなもの)を作ってはそれぞれの話題で盛り上がっていた。
(実は自分のメインHPである「下克上」というサイト名は、その際の組織名「下克上倶楽部」から来ていたりもする)
その興奮が10年経った今でも染み付いていて、今回のアイデアの源泉になった。
「クーロンズゲート」は知る人ぞ知るプレステのゲーム。画面で悪酔いしながらもかじりつくようにプレイしたゲームで、電脳世界に吸い込まれたりする設定だった。まぁ似たような設定のゲームと言うのは今ではたくさんあるものの、やはりこのゲームも自分にとっては衝撃的で、今回の作品の舞台となったバーも、自分のイメージとしてはゲーム内の「龍城飯店」だった。
とまぁこんな感じでアイデアを出し、組み上げたわけだけれど、次に気にかけるのはバランス。コラボが露骨過ぎると駄目だし、気付かれないのも困る。なのでうまく小出しにしつつ、かつ出すところは出してという感じで書いていった。
前篇の主人公は誰かの作品の登場人物にしようと思っていたものの、やはり他人の登場人物を語るわけにはいかないので自分自身の作品から出し、その視点で店内を回る、という構成にした。
そして後篇では作者達が数十年ぶりに集まるという仕掛け。まぁ別に画期的なアイデアというわけではないものの、作品のまとまりにはそれなりに満足している。
何より、書いている自分がいうのも変だけれど、作品内の作者達が皆楽しんでいるのがいい。いつか本当に実現すればいいな、と本気で思っている。
この作品を読んで、他の作品も読み返したい、と思ってもらえれば勝ちだし、そうなってくれることを願いたい。
というわけで、この2年間の集大成、是非ご一読あれ。(もうネタばれしてるけど)
最後に、2年間共に活動してきた5名の方々、並びに読者の方々に感謝します。
こういう場が無くなってしまうのは寂しいけれど、自分自身で何らかの場を探したいと思ってます。

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